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うつ病エピソードチェック表

第1部 プログラム開発の経緯

5.「うつ高齢者のための地域ケアプログラム」の開発

 こうした調査の結果から,うつ状態にあり,社会的に孤立している人を早期に発見し,うつ病や他の精神疾患を診断し,適切な治療につなげるとともに,健康問題や社会的孤立に対する支援を提供していくプログラムが,高齢者の自殺予防やうつ状態の改善,ひいては介護予防と健康寿命の延伸に役立っであろうと予測し,これらの目標を達成するために,「うつ高齢者のための地域ケアプログラム」を開発しました.このプログラムは,(1)うつ病の理解を広めることを目的とする「普及啓発プログラム」,(2)実際にうつ病を発見して治療とケアに結びつけることを目的とする「アセスメントプログラム」,(3)さまざまな悩みごとに応じたり,うつ病やその他の精神疾患を診断したり,必要な情報を提供したり,医療機関と連携したりすることを目的とする「相談プログラム」,(4)うつ病に対する心理社会的ケアを継続的に提供していくことを目的とする「訪問プログラム」,(5)複雑で多様な問題を解決していくために,対策を練ったり,計画を立てたり,役割分担をしてチームで関わっていくことを目的とする「チームによるケースマネジメント」,(6)ソーシャルサポートの資源となる住民レベルでの地域活動を支援する「さまざまな地域活動の強化」によって構成されています.
 このようなプログラム・パッケージを稼動させ,その効果を検証したところ,普及啓発プログラム,アセスメントプログラム,相談プログラム,さまざまな地域活動の強化を実施した2002年〜2003年の間に,2002年と2003年の寝たきり予防健診に参加した高齢者665人のソーシャルサポートが有意に高まり,抑うつ症状が有意に改善しました(表1).しかし自殺念慮をもつ高齢者の割合は変化しませんでした.一方,訪問ケアとケースマネジメントを実施した2003年〜2004年の間には,2003年の時点で「うつ病」と診断され,介入を受けた高齢者37人において,抑うつ症状は改善傾向を示し,自殺念慮の割合は有意に減少し(図6),精神的健康度も有意に改善しました(図7).

表1.寝たきり予防健診参加者のソーシャルサポート,うつ病,自殺年慮の変化
●図6.訪問ケアとケースマネジメントの効果(1)図6.訪問ケアとケースマネジメントの効果(1)
●図7.訪問ケアとケースマネジメントの効果(2)図7.訪問ケアとケースマネジメントの効果(2)