腎臓病を根本的に治す薬は、残念ながらありません。ですから、腎臓機能の低下を抑えるには食事療法が中心となります。基本は、たんぱく質、塩分の制限とエネルギーの確保です。
大澤 繁男先生
1.たんぱく質の制限
腎機能が低下すると、本来なら尿とともに排泄されるはずの尿素など、窒素化合物が体内にたまってきます。窒素化合物はたんぱく質が分解してできるので、たんぱく質を制限する必要があります。
たんぱく質を制限するには、魚介類、肉類、卵、大豆製品などを調整します。
2.塩分の制限
腎臓病は多くの場合、高血圧を伴います。腎臓は体内の余分なナトリウムを尿中に排泄する作用をしますが、腎臓の機能が低下するとナトリウムが十分排泄されないために体内のナトリウムが増加します。そのためナトリウム濃度を薄めるために水分が増加し、血液量が増加して血圧が上がるのです。また腎機能が低下するとむくみが起きやすくなりますが、むくみは水分とナトリウムの排泄能が低下するために、水分が組織間隙にたまって起こります。むくみがある場合は、水分の制限と同時に塩分の制限を行うことが必要です。
3.エネルギーの確保
腎機能が低下しているとき、摂取エネルギーが不足すると、エネルギー源として体のたんぱく質(筋肉など)が分解されるため、たんぱく質分解産物である尿素やクレアチニンなどが生じます。そのためたんぱく質を制限しても、検査結果が悪くなることがあります。体のたんぱく質の分解を防ぐために、油脂類、砂糖類、でんぷんなど、たんぱく質を含まない食品をしっかりととるようにします。
4.水分、カリウム、リンの制限
急性腎不全、長期透析などで尿量が減少した場合には、水分の制限を行います。また、慢性腎不全で、腎機能低下によりカリウムやリンの排泄が障害され、高カリウム血症、高リン血症がみられるときは、カリウム、リンを制限します。
