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うつ病エピソードチェック表

第2部 仙台市抑うつ高齢者等地域ケア事業

2.事業(別紙1参照)

A.普及啓発プログラム

 普及啓発プログラムは「自殺」や「うつ病」の問題について,地域の人々の意識を高め,偏見を解消し,住民主体のこころの健康問題への取り組みを促進することを目的として実施します.
 本プログラムの実施方法のひとつとして,「F.さまざまな地域活動の強化」との連動も想定されることから,区障害高齢課,区家庭健康課健康増進係,地域包括支援センター等の関係機関による協議により内容を検討することが必要となります.

(1)地域住民を対象とする普及啓発プログラム
  • ① 高齢者の自殺とうつ病の問題について地域住民の意識を高め,偏見や誤解を解消し,うつ病の早期発見と早期対応,予防とセルフケアについての知識を普及します.
  • ② 地域の中でのソーシャルサポートがうつ病からの回復や予防に重要であること,そのような考え方に立脚して地域ケアプログラムが作られていることについて,理解を求め,協力をお願いします.

(2)保健・医療・福祉の専門職やボランティアのための研修会
  • ① 高齢者の自殺とうつ病の問題について意識を高めるとともに,うつ病の症状,病態,診断,治療についての基礎知識の習得を目指します.
  • ② うつ高齢者のための地域ケアプログラムの概要を理解できるようにします.
  • ③ アセスメントプログラム,相談プログラムや医療との連携方法について学びます.
  • ④ うつ病などのハイリスク高齢者に対する,訪問ケアとケースマネジメントの方法について,知識と技能の習得を目指します.
(例)地域住民向け普及啓発プログラムの例、(例)スタッフ向け研修、教材一覧

B.アセスメントプログラム

 アセスメントプログラムは,さまざまな保健医療福祉活動の中で「うつ病」に罹患している可能性がある高齢者や「自殺リスク」のある高齢者を,簡便なアセスメントツールを用いて発見し,必要な介入に繋げていくことを目的としています.2段階で構成されており,一次アセスメントでは特定高齢者把握事業で使用する基本チェックリストの質問項目21〜25に該当し,「抑うつ症状」の有無が評価されます.一次アセスメント陽性者に二次アセスメントを実施しますが,ここでは「うつ病」の可能性や「自殺の危険」などが評価されます.二次アセスメント陽性者に対しては,相談プログラムや訪問プログラムの利用を勧め,介入につなげます.

(1)一次アセスメント

 簡便な質問紙を用いて,「抑うつ症状」の有無についてアセスメントを行います.一次アセスメントは,高齢者による自己記入のほか,区保健福祉センターや地域包括支援センター職員による聞きとりによって行います.
 なお,アセスメントにあたっては,本人の全体像を把握しながら実施することが重要です.

(資料1.基本チェックリストのうち,抑うつのアセスメント項目)資料1.基本チェックリストのうち,抑うつのアセスメント項目
最近2週間の様子について聞き,得点を合計して2点以上の場合に陽性とします。
(2)二次アセスメントの暫定実施

 一次アセスメント陽性者に対して,二次アセスメントのうち2項目のみアセスメントを実施します.これは,宮城野区において実施したモデル事業の結果として,多数の高齢者が一次アセスメントで陽性となることが予測されることから,対象者を絞り込むために行うものです.暫定の2項目チェックは,基本チェックリストにより一次アセスメントを行った機関(地域包括支援センター,区保健福祉センター)の職員の聞き取りによって行います.
参考:一次アセスメントと暫定二次アセスメントが同時にできるような,「こころの健康チェックリスト」を宮城野区障害高齢課で作成しました.これを使用すれば,一次アセスメントと同時に以下の2項目がチェックされ,さらにソーシャルサポートの有無についてもチェックできます.

(資料2.二次アセスメント項目のうち2項目調査)資料2.二次アセスメント項目のうち2項目調査
聞き取りの結果,1項目以上が該当すれば二次アセスメントの支援対象とする.
(3)保健福祉センターへの報告(障害高齢化)

 暫定の二次アセスメントの結果,陽性者については,各区障害高齢課高齢者支援係総合相談担当(区によっては,うつ事業担当)に報告します.報告を受けた担当者は,二次アセスメントの日時や同行者等の確認や計画を行います.
 なお,この時点での暫定二次アセスメント陽性者は,続く二次アセスメントの介入拒否や,既に何らかの治療やサービス導入が図られている等,様々な状況にあることが想定されます.そのため,担当者間の対応協議や主治医との連携が必要となる場合があります.
※各区障害高齢課では,高齢者支援係及び障害者支援係より,1名ずつを「抑うつ高齢者等地域ケア事業」担当者として位置づけることとしています.(全区)

(4)二次アセスメントの実施

 9項目による二次アセスメントを保健福祉専門職(訪問看護師や保健師)が,戸別訪問などによって聞き取りをすることにより実施します.(二次アセスメント票は,別紙2参照
 保健福祉センター職員が二次アセスメント実施のための戸別訪問をするときには原則として,一次アセスメント及び暫定二次アセスメントを実施した地域包括支援センター職員が同行するものとします.
 ここでは,主として,「うつ病」の可能性,「自殺リスク」の程度を評価します.自殺リスクの程度の評価には,「不安障害」「身体表現性障害」「アルコール関連障害」が併存する可能性や「受診行動」の有無なども評価されます.
 二次アセスメント実施にあたっては,一度の訪問で聞き取りができない場合もありますので,関係性に留意しながら複数回の訪問によりアセスメントを実施します.

  • ① 二次アセスメント陽性者(必須項目を含む5項目以上が該当すれば大うつ病を,2〜4項目が該当すれば,小うつ病を疑う)に対しては,保健福祉専門職がアセスメントの結果をわかりやすく丁寧に説明し,必要な情報や心理的なサポートを提供しながら,訪問プログラムや相談プログラムの利用を勧めます.
  • ② 身体状況の悪化や自殺への思いなど,緊急を要する場合には,事業を実施している課の担当者,ケースマネジメント担当の専門医,保健福祉センター,医療機関などと連携したり,緊急のケースカンファレンスを開催したりして,介入策を検討します.
  • ③ 二次アセスメント陽性者で,介入が必要と思われるにも関わらず介入が拒否された場合,あるいはアセスメントは陰性でも明らかにメンタルヘルスの問題があって介入が必要と思われ場合には,ケースカンファレンスなどを利用して,今後の対応の方針を検討します(チームによるケースマネジメントを参照).

(5)二次アセスメント結果の報告

 二次アセスメントの結果は訪問指導検討会等を利用し,各区高齢者支援係訪問指導担当(区によっては,うつ事業担当)・障害者支援係うつ事業担当に報告します.その後,陽性者について支援の方向性を協議します.
 また,二次アセスメントの結果を地域包括支援センター等,一次アセスメント及び暫定二次アセスメント実施機関に報告し,今後の方針を協議します.

①陰性者:他の介護予防の必要性により支援の方向性を協議しますが,
             他に支援すべき事項がない場合は,支援は終了とします.
②陽性者:高齢者本人や家族へ十分な説明を行い,同意を得た上で必要な支援を提供します.

C.相談プログラム

 相談プログラムは,保健福祉センターに相談窓口を開設し,メンタルヘルスの専門的な相談に対応するものです.通常は,「総合相談窓口」や「電話相談」の中で,担当スタッフ(精神保健福祉相談員・保健師・看護師など)が相談に応需し,必要に応じて,精神科医などによる専門相談(「高齢者うつ こころの健康相談」など)の利用に繋げます.なお,専門相談の設置にあたっては,各区の実情により,既存の「こころの健康相談」への組み込みなどを検討することが必要となります.
 専門相談では,連携を円滑にし,効果的な対応を実施していくために,以下のような手順を踏みます.

  • (1)事業担当スタッフは,専門相談の利用予約や日程調整,相談室の設営などを行ないます.
  • (2)ケースに直接関わる担当スタッフは,あらかじめ本人・家族らと面接して情報を収集し,こころの健康相談票(別紙3参照)に氏名,生年月日,年齢,性別,生活史,現病歴,相談したいことの欄に必要事項を記載しておきます.
  • (3)本人の来所による相談の他,状況により家族や関係者のみでの相談や,相談医の本人宅への訪問による相談の実施なども検討します.
  • (4)相談医は,担当スタッフより相談票などによって事前に情報を得て状況を把握し,その上で本人または家族と面接し,①暫定的な精神医学的診断,②本人・家族への情報提供や心理的サポート,③医療機関との連携(別紙4参照),④その他の保健福祉資源との連携をはかり,⑤訪問ケア等の今後の介入の方針について検討し,相談票の「診断」「所見・問題点のまとめ」「対応」の欄に必要事項を記載します.
  • (5)相談終了後,担当スタッフやその他の関係スタッフでケースカンファレンスを開き,チームで問題点を共有した上で解決策を検討し,介入プランの検討・立案・調整等を行ない,訪問プログラム等の介入をスタートさせるための準備をします(チームによるケースマネジメント参照).

D.訪問プログラム

 訪問プログラムとは,精神保健福祉に関する専門的な技能を備えた専門職(保健師,看護師,精神保健福祉相談員など)が,介入二一ズのある高齢者の住まいを定期的に訪問し,個別的な心理社会的ケアを実践するものです.訪問ケアを行う地域のスタッフは,精神科医によるスーパーバイズや地域の専門チームによって,継続的な技術的支援を受けることができます.訪問ケアでは,段階的な心理社会的ケアを実践します.第一段階は支持的なアプローチで,これは「関係づくり」,つまりこれから訪問ケアを実施していくための基盤として「安心できる対人関係」を形成することを目標にします.第二段階は問題解決療法的なアプローチで,これは,その人が,その人なりの問題解決に向けて進んでいくことができるようにサポートする方法です.

第1段階:支持的なアプローチ
1)計画を立てる
介入対象となる高齢者について,特に現在の症状,医学的な診断,背景にある多様な問題点についての情報を収集し整理します.そして,これからの訪問ケアの目的,方法,訪問の頻度などについて,ケースカンファレンスの中で十分に打ち合わせをしておきます.
2)訪問日のアポイントをとる
訪問の日時については,電話などで高齢者宅に連絡し,訪問の日程と時間を調整します.訪問日には次回の訪問日程を決めていただいても構いませんが,訪問日が近づいたら改めて連絡し,都合を確認します.
3)ソーシャルサポートを提供する
訪問ケアの第一の目標は,訪問スタッフ自身が「困ったときに相談できる人」「具合が悪いときに相談できる人」になることです.そのような人と人とのつながりによって,訪問スタッフ自身が,地域で暮らす高齢者に情緒的なソーシャルサポートを提供する役割を果たしていきます.このことが,うつからの回復やその予防に役立ちます.
4)よい関係をつくり,それを維持する
このような役割を果たしていくためには,訪問スタッフと高齢者の間で,よい人間関係(信頼できる関係,リラックスできる関係,親しみのある関係)をつくることが大切です.このような関係をつくり,それを維持していくこと自体が,抑うつ状態にある高齢者のケアに最も効果があると言われています.
5)積極的傾聴・受容・共感
訪問スタッフがその高齢者のことをよく知っている,よく理解しているということが,このような関係づくりの基本です.そのためには,高齢者の過去の長い生活の歴史や現在抱えている心配事などに積極的に関心をもって耳を傾け(積極的傾聴),まずはそれをあるがままに受け入れ(受容),その高齢者の立場にたって一緒に感じ,考えていく(共感)というアプローチを心がけます.その際,高齢者自身に自分自身のことを語れる十分な時間を確保することも大切です.
6)記録
訪問時には,その都度,高齢者自身の様子(受け入れ状況,表情),高齢者本人との会話の内容や心配事,日常生活の状況,問題点と対応などを「訪問記録紙」(別紙5参照)に記載します.この作業は第2段階でも継続します.
第2段階:問題解決療法的なアプローチを含むケースマネジメント
1)基本的考え方
うつ病の心理社会的治療法の一つに「問題解決療法」というものがあります.「日常生活で直面する困難な問題を解決する」という意味で,臨床心理学では「社会的問題解決」と言われることもあります.しかし,ここで言う社会的問題解決とは「人々が生活の中で直面する問題を理解し,それに対応してゆくプロセス」のことであり,必ずしも問題の本質を解決することに限定されるものではありません.ここには,問題状況に対する当人の感情的な反応のあり方を変化させることや,問題状況を現実的に可能な形で少しでも好ましい方向に変化させてゆくことなども含まれています.うつ状態にある高齢者の問題解決では,まずは本人と一緒に問題を理解し,本人の主体性を尊重しながら,可能性のある問題解決に向かって一緒に進んでゆくという作業が大切です.そうした作業を通して,うつ状態にある高齢者の絶望感や寄る辺なさを改善し,自己効力感や生きる意欲を回復させること,それが問題解決療法の基本的な考え方です.高齢者のうつ状態の背景にはさまざまな問題がありますが,それらの問題について高齢者と一緒に考え,一緒に解決策を探していくようなアプローチを実践します.
2)建設的な問題志向の形成
うつ状態にある方は,否定的な感情,低い自己効力感,絶望感に圧倒されて,直面しているストレス状況に対してもはや建設的な捉え方ができず,そのために問題解決に向けた取り組みをはじめること自体が困難な状態に陥っていることがあります.このような構えは簡単には変化できないかもしれませんが,「日常生活において問題があるのはごく普通のことであり」「ゆっくりと時間をかけて,問題を整理しながら対処していけば,どんな問題であっても,それなりに状況を変化させることができるものだ」という信念(哲学)をもって,根気よく信頼関係を築いていきます.このような心構えを「問題解決志向的態度」と呼びます.
3)問題の明確化
「問題がしっかり把握されたら,その問題はもう半ば解決されたようなものである」(John Dewey,1910)とも言われています.問題が明確に定義されず,漠然としたままだと,その問題は非常に脅威的で有害なものだと受け取ってしまいがちです.反対に,問題状況の性質を明らかにすれば,その状況がより明確に描きだされるので,問題はそれほど重大なものではなく,否定的なものでもないことがわかります.高齢者の話やご家族の話を聞きながら,①情報を収集し(まずは本人が抱えていると思われる問題状況に関係しそうな情報を収集していきます),②それらを明確でわかりやすい言葉を使って記述し(得られた情報は,曖昧さのない具体的で明確な言葉で表現するように努めます.これによって,問題の性質が明らかになり,解決目標が設定できるようになり,解決に至った場合にもそれを認識することが可能になります),③その状況を実際に問題化させている要因を見分け(得られた情報が事実なのか仮定なのかを見分け,状況に直接係わっていると思われる要因を抽出し焦点化していきます),④問題の本質を理解し(高齢者が抱えることの多い問題には,孤立/ソーシャルサポートの欠如/家族関係の不和/配偶者との死別/経済的な不安/病状が思わしくない/運動機能低下や認知機能低下などの機能障害/痛み/栄養不足/睡眠障害/飲酒問題/介護負担などがあり,しかもこうした問題を複数抱えている場合が少なくありません.こうした問題を焦点化し,その性質を理解します),⑤現実的な解決目標を設定します(焦点化された問題に対して,可能な範囲内での具体的な解決目標を設定します.解決目標は必ずしも状況を本質的に変化させるものである必要はなく,全体として好ましい方向であればよいかと思います.最も重要なことは現実的で可能な目標を設定することです)
4)さまざまな解決策の案出
まずは,できるだけ多くの解決策や対処法を考え出すようにします.それは,そうすることによって,その中から問題解決法として最も有効なもの(あるいは現実的なもの)が出てくる可能性が高くなるからです.このような考え方はブレーンストーミング法と呼ばれており,その背景には,「数の原理」(人がいろいろな解決法を案出すればするほど,問題解決法として最も効果性の高い最善のアイデアに至る可能性もそれだけ高くなる)と「判断延期の原理」(考えられる解決法がすべて出し尽くされるまでは,それらに対して批判的な評価は差し控える方が質のよいアイデアが考え出される)という理論があります.
5)意志決定
ここでは,案出された解決策の中から,「うまくいきそうな方法」「実行できそうな方法」を選択して(複数の方法を選択することもある),全体的な問題解決計画を立てます.現実的な解決策を選択するためには,ときには下位目標を設定して,それに対する解決策を選択するのがよい方法です.

例えば・・・
①(問題)強い不安症状が持続している→(目標)専門医の診断を受け,必要な場合には治療を導入する→(下位目標)相談プログラムの利用を勧め,医療機関との連携をはかる.
②(問題)妻の介護負担が大きい→(目標)介護保険サービスをもう少し有効に利用できるようにする→(下位目標)ケアマネージャーに連絡し,ケースカンファレンスに参加してもらい,介護プランの調整をはかる.
③(目標)慢性身体疾患の治療についての不安が大きい→(目標)かかりつけ医から判りやすい情報をもらえるようにする→(下位目標)相談プログラムを利用して,相談医からかかりつけ医に精神症状に関する情報を提供し連携をはかる.
④(問題)独居のために,病気になったらどうしようという不安が続いている→(目標)困ったときにいつでも相談できる人を確保する→(下位目標)ケースカンファレンスの中で,地域包括支援センター,高齢者保健福祉サービス,ボランティアによる訪問事業,定期的な訪問看護などによる独居高齢者に対するネットワークの強化を検討する.
⑤(問題)食事の献立を考えるのが億劫で,栄養のバランスが悪い→(目標)栄養確保→(下位目標)配食サービスの利用や,それに必要とされる経済的問題(介護保険申請など)を検討する,など.

具体的な対策を講じる場合にも高齢者自身の意見を聞きながら,高齢者の主体性を尊重していくという姿勢が大切です.
6)解決策の導入と効果の検証
解決策を導入し,その結果を評価します.問題解決をうまくやり遂げたときには,それを高齢者本人と評価することによって,自己コントロール感や自己効力感を高める作用をもたらし,新たな問題解決に向かって対処しようという態度の強化につながることが期待されます.結果が不十分な場合には,異なる目標を設定したり,他の解決策を案出する作業を進めたりします.
7)ケースカンファレンス
こうした問題可決のプロセスは,高齢者本人と訪問スタッフの間で行うこともできますが,同時にケースカンファレンスの中で,チームとして作業を進めていくことも可能です.定期的な「ケースカンファレンス」や「こころの健康相談」を利用して,問題点,解決策,今後の対応などについて話合い,今後の方向性を確認していく作業を進めます(チームによるケースマネジメントを参照).
8)訪問スタッフ自身へのサポート
このような介入活動の中では,訪問スタッフ自身にもさまざまなストレスが伴う場合があります.このようなストレスを解消していくために,「ケースカンファレンス」や「こころの健康相談」の利用は有効です.介入はチームで実施していくということを意識しながらケアを実践します(チームによるケースマネジメントを参照).

E.チームによるケースマネジメント

 このプログラムは,「こころの健康相談」実施日などを利用してケースカンファレンスを開催し,多職種からなるチームによるケースマネジメントを実施していくことを目的としています.これは,ケアマネージャーなどがしばしば単独で実施しているケースマネジメントの能力範囲をさらに拡大・強化し,ケアマネージャー自身をサポートする機能を果たします.事業担当スタッフは,関係スタッフヘの事前の連絡や,ケースカンファレンスの設営・進行などを行ないます.ケースカンファレンスでは,主として以下のようなことが扱われます.

  • (1)相談プログラムや訪問プログラムを実施しているケースについて,関係するスタッフが集まり,チームで問題点を共有し,解決策を検討し,介入プランの検討・調整・立案,プランの導入と効果の検証を行います.こうしたケースマネジメントは訪問プログラムと一体となって実施され,訪問スタッフによる介入をサポートします.
  • (2)訪問スタッフの心理的負担を軽減することを目的に,ケースに関するさまざまな悩みについても適宜相談に応じ,チームで対策を検討し,訪問スタッフ自身をサポートします.
  • (3)その他にも,このカンファレンスの中で,本事業全体の方法論を再検討したり,うつ病の予防や回復に役立つさまざまな社会資源との連携をはかったり,そのような社会資源の新たな開発について話合ったりすることができます.こうした話し合いによって,プログラム自体をより質の高いものに発展させることが可能となり,さらには地域づくりにつなげていくことができます.

F.さまざまな地域活動の強化

 ソーシャルサポートの資源となる住民レベルでの多様な地域活動を,技術的・財政的にサポートしていくためのプログラムです.これは,その地域の特性に合わせて考案されるプログラムであり,例えば以下のようなものが考えられます.

  • (1)地域包括支援センター活動やNPO法人などによるサポート事業,相談窓口,訪問活動,サロン活動などの支援.
  • (2)メンタルヘルス・サポーターや傾聴ボランティア活動など,さまざまなボランティア活動の育成と支援.
  • (3)自殺対策ネットワーク会議やこころの健康づくり連絡協議会など,地域レベルでのネットワークづくりの支援.
  • (4)その他の高齢者の健康増進や生き甲斐づくりを目的とする地域活動(生きがい活動,回想法教室,運動教室,老人クラブ,学習教室,趣味サークルなど)の支援.